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ABLとABSの違いとは?それぞれをわかりやすく解説

ABLとABSは、どちらも企業が資金調達を行うための手段です。比較的新しい方法であることから、「存在自体知らない」、「名称は知っているが内容は良く分からない」という方も少なくないでしょう。

そこでこのコラムでは、ABLとABSがどんなものかをわかりやすく解説し、違いを明確にしていきます。

ABLとは

ABLとは、Asset Based Lendingを略した言葉で、「資産を基礎とした貸出」を意味しています。より詳細に説明すると、企業が持つ動産や売掛債権などを担保として、資金の融資を受けるための方法です。

日本ではまださほどメジャーな資金調達方法とは言えませんが、アメリカではすでに広く浸透しています。最近では、アメリカの企業向けの融資の2割程度はABLであるというデータも存在しています。

日本でABLが注目され始めたのは、金融機関から中小企業向けの貸し出しが低迷していることが背景となっています。日本国内の融資は、従来土地や建物などの不動産を担保として利用することが一般的でしたが、中小企業の多くは担保にできる不動産を所有していません。そのため有担保の融資を受けづらいうえに、いったん経営状態が悪化すると、資金繰りがどんどん難しくなっていく傾向がありました。

そこで注目されたのが、アメリカで普及しているABLです。ABLなら自社の商品や売掛債権を担保として資金調達ができますから、中小企業やフリーランスでも資金繰りに困る局面を少なくできるのです。

このため日本の省庁も、2000年代前半からABLの利用を後押しするために法整備を進め、最近少しずつ普及するようになってきたのです。

ABLの仕組み

ABLは売掛債権や自社商品、原料などの動産を担保として、金融機関から融資を受ける方法です。

担保に利用されるものとしては、自社商品の在庫や機械設備のほか、農作物や売掛債権など、幅広いものが対象となります。より具体的に紹介すると、未登録の自動車や金属材料、貴金属や天然素材、ブランド品や穀物、牛や豚、魚や材木など、幅広い物品が利用可能です。

貸付を受けるための「担保」としては、旧来の日本では土地や建物などの不動産を利用することが一般的でした。しかし、ABLを利用すれば不動産を所有していなくても融資を受けることができます。

ABLのメリットは、不動産を所有していなくても、動産を担保として融資を受けることができる点にあります。そのため、中小企業やフリーランスでも利用しやすい特徴を持っています。また、担保なしで融資を受けるケースよりも金利を抑えることができる利点もあります。

ABLのデメリットは、利用する金融機関に非常に多くの情報を提出しなければならないことがあります。また、審査にある程度の期間が必要なので、即日の資金調達を希望する場合には向かないことも記憶しておきましょう。さらに、金融機関によって担保にする物品の価格評価が異なるため、時には過剰担保になる可能性があることにも注意が必要です。

ABSとは

ABSとは、Asset Backed Securitiesの略語で、日本語では「資産担保証券」、または「アセットバック証券」と呼ばれています。

ABSは広い意味では、さまざまな資産の信用力を裏付けるための有価証券です。より狭い意味では、COD(債務担保証券:公社債やローンで構成される金銭債権を担保として発行される証券化商品)やMBS(モーゲージ証券:主として不動産担保融資を裏付けて発行される証券:流動性が高く信用力もあるが、期限前償還リスクもある)を除いた証券と認識されることもあります。

ABSは、主として売掛債権やリース債権、クレジットカード債権やローン債権などのほか、不動産などを裏付けとして発行されることを特徴としています。

アメリカでは1970年代から利用されており、始まりはMBS(モーゲージ証券)でした。その後、日本では1998年に有価証券として認定されたことで、利用されるシーンが増えるようになりました。

ABSの仕組み

ABSを発行するためには、まずSPC(特別目的会社)を設立して、資産をSPCに譲渡することで自社から資産を分離します。SPCは譲渡資産を裏付けする証券発行を行い、販売します。

ここで発行されたABSは最初の企業とは完全に切り離されているので、資産の信用力に対して投資が行われます。

ABSの多くは短期資産で、格付が高い債券が多いことを特徴としています。また、流動性が高いので、短期運用での追加リターンを求める場合にも利用されます。

ABSを利用するメリットは、資産を証券化することでオフバランス化ができることです。オフバランス化とは、バランスシート(貸借対照表)に資産が計上されないことを意味します。バランスシート上、少ない資産で利益を上げていることで企業としての評価が高まりますから、多くの企業は自社ビルなどを証券化することが一般化しているのです。

ABSのデメリットは、複雑な仕組みを利用することからコストがかかる点にあります。そもそもSPC(特別目的会社)を設立するだけでも登記等のコストがかかりますし、証券化する際にもさまざまなコストが発生します。また、証券化する物件はそれなりの価値が無ければ投資家から見て魅力が無いので、このシステム自体成り立ちません。

ABLとABSの違いとして最も大きいのは、ABLは融資であることに対してABSは証券である点です。ABLは売掛債権や社内在庫、設備などを担保として資金調達する手段ですが、ABSは債権や不動産の信用力を裏付けとした証券に対する投資として資金を得ます。そのため、名称は似ているものの、性質としてはかなり違うものと考えて良いでしょう。

また、ABLは中小企業やフリーランスでも利用できますが、ABSは証券化に見合う価値を有する不動産を所有していなければ有効ではありませんから、比較的規模が大きい企業が利用することが多い手段です。

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まとめ

近年、資金調達方法として広がりつつあるABLとABSについて、それぞれどんなものなのかを解説しました。

ABL、ABSともに日本ではまだそれほど広まっていませんが、アメリカではすでに一般化している資金調達の手段です。どちらの方法にもメリット・デメリットがありますが、概略でも知っていれば、資金調達の方法を広げることができますから経営上有利になります。ぜひ、この機会に資金調達方法のひとつとしてABLとABSを名称だけでも記憶してください。

ブルック・コンサルティングは、企業の資金調達サポートを得意としており、融資やファクタリング、補助金や助成金の申請サポートを、さまざまな業種に向けて行っています。さらに、事業継承やM&Aに関するアドバイスも可能です。

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