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運送業の経営のポイントとは?売上を効率よく上げるために覚えておきたいこと

運送業に従事する人の中には、「いつかは独立したい!」と思っている方が少なくないでしょう。また、個人事業としてトラックドライバーをしている人なら、「法人化して経営者になりたい!」と考える方も多いかと思います。

そこでこのコラムでは、これから運送業で起業する人や、すでに起業している人に向けて、売上を効率よく上げるコツをまとめていきます。

運送業の経営には「運送業自体のメリット・デメリット」の把握が大事

どの業界にも、それぞれの特徴があります。それを知らないまま経営していると利益が上がらないどころか、赤字ばかりになったり、経営が悪化して倒産したりすることもあり得ます。そのため、業界のデメリットを知ってネガティブな面をカバーしつつ、メリットをどのようにして最大化するかが、経営成功のカギとなります。

この項目では、まず運送業の一般的なメリット・デメリットを記載しますので、ぜひ頭に入れておいてください。

運送業のメリット

個人であっても、運送業に従事すること自体には多数のメリットがあります。

個人事業主のドライバーであれば、技能と資格という「手に職」で食べていける業種なので、プライドを持って生きていくことができます。また、人間関係に悩む可能性が少ないこと、休日の設定が自分でできることなども大きなメリットです。

起業して運送会社を経営することにも多数のメリットが存在します。個人事業に比べると、法人として登録することで信頼を確立することができますし、従業員を雇うことで業務量を増やしていくことも可能です。

ドライバーはどうしても身体的負荷がかかる仕事ですから、年齢に応じて運転よりも経営にシフトしていきたいと考える人には起業はおすすめの選択肢です。

近年、ネット上での通信販売やフリマサイトの利用料増加により、運送業の需要は高まっています。そのため、効率よく業務をこなせば、売上・利益を増していくことができる業界だと言えます。

運送業のデメリット

メリットが多い運送業ですが、デメリットもあります。

個人事業主としてドライバーと経営を兼ねている人であれば、長いスパンで身体の健康を保っていなければならないプレッシャーと無縁でいることはできないでしょう。

また、個人でも企業経営者でも、燃料の高騰などに利益が左右される共通点があります。さらに、荷主の都合で荷受け、荷下ろしを待たされることなど、運送業者側では解決しにくい悩みがあることも、業種特有の難点と言えるでしょう。

運送業で売上アップを実現するための経営のポイント

ここからは、運送会社を経営する人に向けて、売上アップに役立つポイントを具体的に解説していきます。

運送効率(生産性)を上げる

運送業は何らかの物品を移送してその報酬を得るという事業で、いわゆる労働集約型の事業です。そのため、例えばニーズの高いアプリを作って大量のユーザーを獲得するといった種類の収益を上げることはできません。

その一方、ネット上の仕事のように急激に需要が減るという可能性は低く、多少の技術革新があっても企業や店舗、家庭への運送という仕事がなくなることはまずあり得ません。その点を踏まえると、堅実に生産性を上げることこそが運送業で利益を上げるための最重要課題と言えるでしょう。

生産性アップのための具体的手段としては、積載量、実働率、実車率などを具体的に把握・改善すること、運行時間を上げることなどの工夫が必要です。

積載量はトラックに積み込める量で、1回の移送でたくさん積んだ方が効率的なことは、このコラムを読む方なら「文書化するまでもない」と思われるでしょう。しかし、国土交通省が2018年に提出した「トラック運送業の現状等について」という調査によれば、営業用トラックの積載効率は2010年頃から低下が続いているという事実があります。

近年は40%を下回っているということですから、単純計算では平均値を60%にするだけで効率が1.5倍になるわけです。実際には荷主の都合があるので、単純なものではないでしょうが、改善の余地が多い着目点であることは明確です。

参考1:https://www.mlit.go.jp/common/001189107.pdf
参考2:https://www.mlit.go.jp/common/001354690.pdf

コストの削減を徹底する

前述したように、運送業は爆発的に売上や利益を上げることができる業種ではなく、コツコツと業務を重ねて堅実に利益を出す業種です。そのため、日常の業務の中でのコスト削減は利益確保に直結する課題です。

取り組みやすいコスト削減方法として考えられるのは、梱包材などの消耗品を抑えることや、配送ルートや高速道路の利用方法の見直しなど、現状の業務を大きく変えずにできる手法でしょう。

上記は非常に重要ですが、今現在無駄が多い起業でない限り、劇的なコスト削減は果たせない可能性もあります。そのため、1回の配送で複数の荷主から仕事を受ける共同配送(または混載)や、モーダルシフト(トラックだけでなく鉄道や船舶も利用すること)なども検討してみることをおすすめします。

また、細かい配送を行っている会社であれば、配送管理のITツールを導入してルートや動態管理などを見直すこともコストカットに繋がります。さらに、コストカットを考えるとき、会社全体で見るだけでなく、車両ごとに把握してみることもおすすめします。

何かの業種に特化するか手広く運送するかを早い内に決めておく

一口に「運送業」と言っても、運ぶものには食品や精密機械、燃料などの液体など、さまざまな対象があります。ガスや化学薬品などの危険物であれば、運送するために資格を取る必要がありますし、運ぶ対象が変われば必要な車両や設備も変わってきます。

また、経営を効率化するためには、業務量が多い物品を運ぶことで仕事を確保しやすくするか、ニッチな分野に特化してオンリーワンを目指すか、といった会社の方向性をできるだけ早く決めておくことが重要です。

前述したような危険物を運搬する資格を取るためには、筆記試験だけでなく実務経験が要求される場合もあるので、取得すること自体を計画的に進めることも考えなければなりません。

特に業種のターゲットを決めずに、「依頼があれば何でも運びます」という業者も存在します。このような業者は一見便利な存在に見えますが、実際には得意分野が無く、専門性が低い業者と判断されることもあるので注意しましょう。

その一方で、例えば高価な美術品など、頻繁に発注されない特定分野に特化しすぎると、安定経営が難しい場合もあります。そのため、特化する業種の傾向を見て、複数の業種の仕事ができるようにリスクヘッジしておくことも忘れないようにしましょう。

最初は運送実務よりも顧客選択の営業に時間をかける

起業直後は、「依頼される仕事を手当たり次第に受けて実績を増やす」という行動に出がちです。実績を増やすことは必要ですが、優良な顧客を選んで仕事をすることも重要です。利益率が低い仕事ばかり受けていると、経営を維持するだけで精一杯になって、新たな事業展開や設備投資が困難になることが多いからです。

また、コンプライアンス意識が薄い顧客の仕事を受けていると、制限速度を守ることすら考慮しないような無理を言われることもあるかもしれません。さらに、難しい要求ばかりしてくるのに、報酬が低かったり、業界の相場を無視した価格を押し付けたりするような荷主が存在しないわけではありません。

このような仕事を続けていると、待遇改善はできないのに従業員が無理をすることが増えて、ドライバーのモチベーションが低下します。ドライバーがストレスをためるということは、それだけミスや事故のリスクも高まるということですから、経営者としては無視できる事態ではありません。

2018年に貨物自動車運送事業法という法律が国会で可決されました。この法律が検討された背景には、荷主の無理な要求からドライバーを守るという目的もあります。つまりこれは、法律に定めなければならないほど、無理なことをいう荷主が存在する事実が多数あったことを意味しています。

現在はこの法律が施行されており、荷主勧告制度も強化されたので事態は改善しつつありますが、残念なことに発注側である有意性を利用して無理を通そうとする荷主がいないわけではありません。

このような顧客と無理な付き合いを続けていると、事故の発生、ドライバーの体調不良、退職希望者が続出するといったことも考えられるので、顧客と業務の質を踏まえた営業を早い段階で行うことを心がけましょう。

定期的に経営改善対策ガイドブックに目を通す

社団法人全日本トラック協会は、運送業を営む人に向けて「中小トラック運送業者のための経営改善対策ガイドブック」という情報を公開しています。このガイドブックには、運送会社の経営を安定的に進めていくうえで必要な情報が多数記載されています。

ガイドブックを監修・発行した社団法人全日本トラック協会は、1948年(昭和23年)に発足していますから、すでに70年を超える年月にわたって運送業者やトラックドライバーを支えてきた実績を持っています。そのため、ガイドブックの内容は総合的な面から運送会社やドライバーに配慮されており、事業改善の提案は豊富で具体的です。

運送業を経営する人は、ぜひ定期的に上記のガイドブックに目を通して、事業の効率化やコストカットのヒントをつかむことをおすすめします。

参考:https://jta.or.jp/wp-content/themes/jta_theme/pdf/keiei/keiei_kaizen_guidebook.pdf

利用できる補助金・助成金は全て利用する

運送会社を安定的に経営していくには、設備投資や人材確保、教育や安全対策などさまざまな点で資金が必要になります。しかし、費用をかけようにも資金が潤沢とはいえない会社も多いですし、融資に頼ってばかりもいられないという考えもあるでしょう。

そんな時は、国の省庁や全日本トラック協会などが運営する補助金・助成金が利用できるかどうかを確認してみてください。

補助金や助成金は書類作成、申請の手間があるものの、金融機関などから受ける融資のように返済の必要がありませんから、前向きに利用しない手はありません。人材に関係する助成金であれば、厚生労働省が複数の項目に対応しているので、ぜひ以下のサイトをご参照ください。
「事業主の方のための雇用関係助成金」

また、全日本トラック協会は、安全対策や環境対策、経営改善事業などにかかる費用の助成を行っています。例えば安全装置の導入や従業員の準中型免許所得を助成するなど、助成の方向も多様なのでこちらもじっくり見て、有効に利用することをおすすめします。
「全日本トラック協会 助成制度」

なお、「助成金や補助金を利用したいが書類作成や申請作業が苦手」、「忙しくて助成金を受けるための準備ができない」という場合は、運送業界の企業、個人事業主を経営改善の面でサポートしている、ブルック・コンサルティングにお気軽にご相談ください。

ブルック・コンサルティングがサポートできること

中央区銀座に位置するブルック・コンサルティングは、運送会社や個人事業主として運送業を営む方の経営・財務面でのサポートを得意としています。当社は経営面での現状の問題を明らかにしつつ、資金繰り改善・資金調達に向けた具体的なアドバイスができます。また、雇用拡大や設備投資などを考える場合の補助金・助成金の申請サポートも得意としています。

さらに、事業継承やM&Aの相談に乗ることもできますので、経営上困ったことがあればぜひブルック・コンサルティングにご相談ください。

まとめ

運送会社を経営する人、個人事業主として運送業を営む人に向けて、運送業自体のメリット・デメリットを解説したうえで、売上・利益を向上するポイントをわかりやすく解説しました。

運送業は適切な努力と管理をすることで利益を蓄積していく業種ですから、ひとつの対策で劇的に利益が向上することはほとんどありません。そのため、売上向上、コストカット、事業形態の見直しなど細かい手段を積み重ねることが利益のアップに直結します。

ネット通販やフリマアプリなどの利用が増えたことなどで、運送業者の活躍の場は増えていますから、ぜひこのコラムを参考にして、運送業界の勝ち組を目指してください。

また、経営していく中で資金繰りの不安がある場合や、補助金・助成金の申請を考えている場合、ぜひブルック・コンサルティングにご相談ください。当社は、運送業を営む方々からのご相談にお応えし、経営改善を成功させてきた実績を多数持っています。

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