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「PMI」とは?言葉の意味やM&Aの際の重要性について解説!

企業がM&Aを行う際に「PMI」という言葉を耳にすることがあると思います。PMIはM&A後の事業展開を決定づける重要な工程ですが、あまり知られていない面もあります。

そこでこのコラムではPMIが何を意味しており、取り組むことでどんな効果があるのかを解説します。またPMIの実施段階や成功のためのポイントもわかりやすく説明しますので、ぜひ参考にしてください。

PMIの概要

PMIとは、Post Merger Integrationの略語です。言葉の意味としてはかなり幅広いですが、企業のM&A(合併買収)に関連して使用する場合は、M&Aを行った後にその効果を最大化するための取り組みを示しています。

より具体的には、M&A以前には別々だった複数の会社が統合後に円滑に業務を遂行し、統合以前より大きな効果を上げていくために、経営面、業務面、意識面の3つの角度から統合を果たす必要があるのです。PMIをしっかり行わないと、混乱やあつれきが起こって業績が悪化し、M&Aそのものが失敗に終わってしまうことがあります。

次の項目では、PMIを軽視したことで起こりえるトラブルなどを具体的に記載していきますので、これからM&Aに取り組む場合は、ぜひ参考にしてください。

PMIを軽視してM&Aをした場合に起こり得るリスク

この項目では、M&Aを行った際にPMIを徹底しなかったことで起こりえるリスクを具体的に紹介します。手間暇かけて進めたM&Aが不幸な結果に終わらないように、ぜひ参考にしてください。

契約内容が曖昧で不誠実な交渉としこりを残してしまった

M&Aは単なるものの売買ではなく、企業ブランドや経営方針、従業員の待遇などが大きく変化する取引です。そのため、契約を行う際は、経営権の譲渡方法や問題発生時の対応などを含めて契約を交わす必要があります。

しかし、M&Aに慣れている企業や経営者はさほど多くはありませんから、「なんとなく」契約が進んで、後から問題が頻発するということは起こりがちです。

また、契約に当たる人が誠実さを欠いた言動をすると、その言葉が独り歩きして特定の陣営でしこりが大きくなる、といったことも起こります。

見通しが甘く、想定していたシナジーが期待できなかった

複数の優良企業が合併して生まれたシナジー効果によってM&Aが成功する、という事例は多数存在します。しかしその一方で、会社の風土などはなかなか明文化されるものではないため、予想したようなシナジー効果が出ない例も少なくありません。

M&Aを行う際によく使われる言葉としてデューデリジェンス(DDとも言う)があります。これはM&Aの前に適正な調査をすることを意味しますが、多くの場合、財務や法務に関連したデューデリジェンスには大きなリソースが割かれるものの、実際にビジネスを進めるための調査や、企業風土の調査はおざなりになりがちです。

これは、M&A後に起こる混乱を甘く見た結果発生することで、非常にありがちな失敗のパターンなのです。

簿外債務の存在に気付けなかった

貸借対照表に表示されていない簿外債務も、M&Aを失敗に終わらせる要因になりがちな要素です。

簿外債務そのものは会計上の手段として使われることがあるので、存在そのものが悪いわけではありません。しかし、M&Aの際に契約が進行してから発覚した場合などは大きな問題となりますし、統合すべき企業間での信頼関係も危うくなることがあります。

簿外債務は残業の未払分や買掛金、リース債務や賞与引当金、訴訟リスクや退職給付引当金など多数の要素があるので、気付かれないままM&Aが進んでしまうこともあります。後になって発覚するほど傷は深くなりますから、ぜひM&A交渉時に適切に提示できるように、簿外債務の厳正な調査と、見える化を進めることをおすすめします。

M&A直後の混乱により業績悪化につながった

M&Aは別々だった会社を統合する作業ですから、経営上の決定の仕方から伝達方法、経理や顧客管理のシステムなど多数の点で大きな変化が生じます。そのためM&A直後には混乱が起こりがちで、悪い場合には経営判断のタイミングを逸したり、顧客管理や経理上の大きな失敗を招いたりするなど、内外に影響が出る可能性があります。

これを防ぐためには、事前に双方の業務の違いを照らし合わせ、リスクをしっかり洗い出し、統合後の混乱を最小限にするために十分なリソースを割くことが重要です。

従業員から反感を買い、人材の離職を招いた

M&Aが行われると知れば、従業員は必ずと言っていいほど不安を感じます。従業員の不安は、職場環境の悪化や待遇の低下だけでなく、雇用が失われるのではないかというレベルに及ぶこともあります。

すると、不安を抱えたまま放置されるより転職しようという人も出るかもしれません。また、M&A実行後に不満を感じて会社を去っていく人が出ることも十分にあり得ます。

このような時転職を考えるのは、実際に転職がしやすい若手従業員に加えて、「別の環境でも活躍できる」という自信を持つ優秀な従業員であることも多いですから、事業の遂行に大きなダメージを受けることになるでしょう。

多くの場合、M&A交渉中の経営陣は財務面などに目が行きがちで、従業員のストレスは放置されやすい傾向があります。この点に着目して、M&Aを行う場合は、できるだけ早く従業員の不安を払しょくするように努めましょう。

雇用や待遇が悪化しないことや、むしろ好転する可能性が高いことなどを明確に説明すれば、従業員もM&Aに前向きに取り組んでくれるようになりますから、混乱を抑えやすくなるメリットもあります。

PMIのプロセスと実施段階

この項目では、PMIのプロセスと実施段階について明記します。

経営統合

M&Aを成功に導くには、それまで別々だった経営体制が一つにまとまらなければなりません。これは単に経営者が変わるということではなく、意思決定の方法や方向性、会議体や伝達方法、人事体系や報酬体系などの制度面も変わることを意味しています。

特に人事においては、表面上波風を立てないための思いやり人事や、たすき掛け人事が横行すると、M&Aを失敗に導く要因になりがちです。人事はあくまでも適材適所を踏まえて合理的に検討し、その結果が従業員の不満を招きそうな場合は、合理的な検討の結果であり、新たな布陣が利益をもたらすために必要なことを丁寧に説明しましょう。

業務統合

M&A進行中も基本的には従業員は日々の業務をこなしています。その中では、物品を購入したり、顧客に物品やサービスを提供したりして、お金の出入りや顧客管理が続きます。その点を踏まえて、業務への影響が最小限になるように統合を進める必要があります。

顧客に迷惑をかければ、客離れにつながって売上や利益が低下しますし、パートナー企業や従業員が不満を感じれば業務の質が低下します。これが起こらないようにするには、金銭管理のためのシステムを先に整理すること、M&A後の変更点をしっかり整理・周知して変化に備えることが欠かせません。

意識統合

M&Aを成功させるには、従業員が敵対したり摩擦を生んだりすることなく、「シナジー効果を生むことで企業として成功できるチャンス」であることを周知する必要があります。

このためには、M&Aを推進するチーム内で事前に丁寧な議論をすることが重要です。統合の際に2社間の強弱差が少ない場合はともかく、明らかに「買い取られる」と感じるような事例では、買い取られる側が「従」の状態だという意識も起こりがちです。このため、M&A後の成長に向かう意識が持ちにくいことも多いので、成長に向けてプラスの意見を出し合う風土を醸成することが重要と考えましょう。

また仮に強弱の関係がないとしても、異なる企業文化を統一していくことは容易ではありません。何と言っても重要なのは従業員の納得ですから、「どう変えるか」だけでなく「どうやって納得を引き出すか」にも力を注ぐことが重要です。

PMIを成功させるためのポイント

ここからは、PMIを成功させるために留意すべきポイントを記載します。

デューデリジェンスや統合計画を統合作業から逆算する

PMIは要素が多く、手間もかかりますが、PMIを遂行すること自体が目的になると、M&Aの成果は上がりません。デューデリジェンスや統合計画の中で、M&A後に起こりうる問題を事前に察知することこそがPMI成功のカギと言っても良いでしょう。

例えば、経営や組織の方針転換があれば、現場が混乱することは予測できます。また、購買手法変更による仕入れ値の上昇、キーパーソンの退職、業務効率の低下やブランドイメージの低下なども起こりえる事態ですから、事前に予防策を講じることが重要です。

このように、M&Aのマイナスの側面を最小化することを考えながらPMIを進めることをおすすめします。

買い手企業の意向に沿った統合作業を進める

PMIの要素は、経営体制や組織構造、制度面、業務面、文化面の統合に大別できます。

経営的には、理念やビジョン、管理体制を再構築し、中長期的なプランを作る必要があります。制度的には決算体制や労務、人事制度の見直しが欠かせませんし、業務面では営業や事務プロセスの変更、会計管理や原価管理のシステム変更が欠かせません。文化的には、教育や研修のほか、人事交流も考えなければならないでしょう。

作業を進める上で、方法を決めかねる点も出てくるでしょうが、基本的には買い手企業の意向に沿った統合を進める意識を持つことが重要です。

方向性と期日を定め、性急すぎるスケジュールは組まない

PMIを成功させるには、まず統合の方向性を定めることと、スケジュールを明確にすることから始めましょう。

PMIは十分に議論して準備を進めることが重要なので、性急すぎるスケジュールは避けなければなりません。統合や業務変更の速度が早すぎると従業員がついていけないこともあり、混乱や意欲の低下につながることもあるので注意が必要です。

PMIを進めるにあたって目安とされることが多いのは100日、または1年です。性急さは避けるべきではあっても、期間が過剰に長すぎると業績向上につながりません。その意味で100日または1年という期間は区切りも良く、従業員にも周知しやすいなどの理由から適切とされているのです。

優先順位の高いものから取り組む

PMIには人手と資金を使いますから、優先順位を決めて取り組むことが重要です。

優先順位の決め方は、重要度が高いものから進めていく考え方と、早く成果を出せるところから進めていく考え方があります。リスク回避など緊急性が高い部分は後回しにはできないので優先されることが多いですが、難易度が高いものばかりに取り組むと成果が出にくくなりがちです。

M&Aには従業員の不安がつきものですから、早く成果を出せる取り組みを優先することで、実働する人の不安を軽減することも考えましょう。これは「クイックヒット」という考え方で、早期に何らかの手ごたえを得ることで、統合に関わる全ての人のモチベーションを上げることに役立ちます。

PMIに優秀な人材の確保・外注をする

PMIを適切に進めていくためには、経営者が先頭に立って経営統合を進めなければなりません。また、企画・推進・実務作業に当たる人材としては、可能な限り優秀な従業員を投入する必要があります。

調査や提案、議論を冷静かつ前向きに行うことができる人材を投入しなければ、このコラムの前半に記載したPMIを軽視してM&Aをした場合に起こり得るリスクに示したような事態が起こることが明白だからです。PMIはあるときには自社の欠点にも向き合うことを必要としますし、人情に流されない合理的な判断も必要です。

またその一方で、従業員への配慮を欠くとシナジー効果を得ることはできませんから、M&Aを成功させるには、業務上の合理性と人心への配慮を両立できる人材を投入することが不可欠なのです。

とは言え、上記に該当するような人材は間違いなく実働上も主要な役割をこなしているはずで、この人材が実務から離れることは事業を遂行するうえで大きな痛手になることも確かです。

そんな時こそ、M&A、PMIに精通した経営コンサルタントに外注することをおすすめします。外部に依頼してPMIを進める場合も社内スタッフの強力は必要ですが、業務機能の低下を最低限にすることができます。

もちろん、外部の経営コンサルタントであればどこでも良いということではなく、M&AやPMIに精通しており、実施経験を多数持つ会社であることが重要です。

ブルック・コンサルティングがサポートできること

中央区銀座に位置するブルック・コンサルティングは、M&Aや事業継承のサポートを得意としています。

M&AやPMIの取り組みは、多くの企業にとって慣れないことが一般的です。そのため、プレッシャーに感じる人も多いですから、統合を円滑に進めていくためにも、ぜひ頼れるアドバイザーとして当社をご利用ください。

当社は各企業の特徴を踏まえつつ、多くの経験と豊富な経営理論に基づいて、有効なPMIを行うためのアドバイスができます。また、一般的なサービスは最終合意から100日までの部分のPMIのみとなりますが、当社は基本合意直後のデューデリジェンスから、100日を過ぎた後の業務及び文化の統合まで手厚く監修・アドバイスを行います。

M&AやPMIに資金が必要な場合は、金融機関からの融資や補助金・助成金のサポートを行うなど、財務面での後押しも可能です。

まとめ

M&Aを行う際の重要な要素であるPMIについて、概要の説明や重要性を解説したうえで、具体的な進め方をまとめました。M&Aが成功するかどうかはPMIの取り組み方に大きく左右されますから、ぜひこのコラムを参考にして、適切なPMIを進めてください。

ブルック・コンサルティングはM&Aに関連する円滑なPMIの支援のほかに、資金調達のサポートも多数行っております。企業として、M&AやPMI、資金調達などをお考えであれば、数多くの実績を持つブルック・コンサルティングにお気軽にご相談ください。