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運送業がなくなることはある?運送業の将来性について

近年、自動運転やドローンを使った配送の研究や実験のニュースが話題になることが増えています。そのため、「運送業自体がなくなるかもしれない」という危機感に悩まされている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

今回は特に運送業の経営者に向けて、「運送業がなくなることはあるのか?」という疑問に答えていきます。

【結論】運送業はすぐにはなくならないが、ドライバー不足で倒産するリスクはある

最初に結論を言うと、最新技術の発展によって運送業がすぐになくなることは、まずあり得ません。自動運転やドローン、AIなどが研究されているのは事実ですが、現時点ではすべてが無人化されるような段階にはなく、技術発展や法整備がまだかなり必要だからです。この記事の前半では、その状況や理由について細かく解説していきます。

その一方で、運送業界は10年来続くドライバー不足に悩まされているのは事実ですから、この点で収益が上げられなくなって倒産するリスクは存在しています。そのため、この記事の後半では、運送業を続けていくうえでの眼前の問題点を明確にしていきます。

運送業がなくなると言われている要因

ここではまず、技術の発展によってドライバーが不要になり「運送業がなくなるかもしれない」とささやかれている理由を紹介していきます。

科学技術の発展の度合いや法的なことは専門外と感じる方も多いでしょうから、出来るだけ専門用語を使わずにわかりやすく解説します。また、技術革新の傾向や、国の省庁が取り組んでいることの方向性を知っておけば、変化に乗じて利益を上げることも不可能ではありません。

その点を踏まえて、今後も生き残っていきたいと考えている経営者の方は、ぜひ目を通してください。

自動運転トラックの実現

無人でトラックを走らせることができる自動運転の技術を開発している企業や研究機関は、非常に多く存在しており、日本の省庁の注目も集めています。

実際に、国土交通省も有人のトラックを無人トラックが追走するという実験を進めています。近年の運送業の需要の高まりに対して、ドライバー不足というマイナスの要素があることは、国家として取り組むべき問題点である、という認識が強いからです。そのため、今後も国の予算が投入され、自動運転の技術革新は進んでいくでしょう。

とはいえ、技術面の向上や法的整備など課題はまだあるので、実用化に至るにはまだ時間はかかる、という見解が多いのも事実です。

ドローン配送の進歩

ドローンは軍事や撮影、災害対応などの分野ですでにさまざまな活躍をしていますが、運送関係での利用も期待されています。日本の大手物流会社や、国土交通省、経済産業省などもドローン配送に着目しており、2020年に「都市を含む地域における荷物配送の実現・展開」という名称で、ドローンを使って物流や警備、医療、災害対策などを革新していこうと発表しました。

日本ではドローンが飛ぶことを許されている高度は150mまでとすでに取り決めができており、その高さなら現在地上で物流を阻害する渋滞はなく、運送業界の人手不足や地上の渋滞緩和につながることを期待されています。

その一方で、ドローンが墜落して人に危害を及ぼす可能性があることや、ドローン自体が損耗すること、天候不良に弱いことなどさまざまな問題も提起されています。そのため、2022年3月現在、急激に運送業がドローン化されてトラックドライバーの仕事が奪われるということはなさそうです。

ただし、経営者としては今後の動きにアンテナを張っておくことをおすすめします。

AIの進歩による人間を介さない流通の最適化

AIの技術はすでに多くの分野に導入されて成果を上げています。運送の業界でも顧客管理や積み荷の管理、輸送ルートの効率化などの用途でAIの活躍が期待されています。

運送業で会社を起こすには運行管理者の資格を持つ人が所属することが必須とされていますが、これは法的な取り決めであり、AIがこの人にとって代わることはすぐにはありません。
むしろAIの導入で運行管理の仕事が効率化されるので、会社としては生産性の向上につなげることもできるでしょう。

運送業がすぐにはなくならない理由

この記事の前半にも書いた通り、自動運転やドローン配送、AIの発展などの研究が進んでも、運送業がすぐになくなることはありません。この項目ではそれがなぜなのかを明確にしていきます。

運送業は配送作業だけが仕事ではないため

「運送業」はトラックドライバーによる配送業務が中心と思われがちですが、実際には業務の受注や配送計画の作製、荷物の積み下ろしや顧客対応など、さまざまな要素が複雑に絡み合って成り立っています。これらの業務は非常に多様ですし、煩雑な面が多く、顧客ごとのニーズに細かく対応する必要もあります。

その点、人間は顧客ごとの要求に、素早く細かく対応して行えますから、変化や多様な仕事に向いているというメリットを持っています。

これを踏まえれば、仮に自動運転などの技術が発達したとしても、業界自体がすぐになくなることは考えられません。

自動運転の技術発展と浸透にはまだまだ時間を要するため

ドローンやトラックの自動運転、AIなどは、人手不足が慢性化している運送業界を救うと考えられている新しい技術です。これらの発展は、運送業を効率化するために有望であることから、官民さまざまな組織が研究や実験を進めています。そのため、いずれは市場にも本格投入される時期が来るでしょう。

とはいえ、運送業は物理的にモノを運ぶ仕事なので、そこには常に事故の危険がつきまといます。そのため、安全性が十分に確保できなければ、一部の範囲でのみの使用に限定される可能性もあります。

例えば、スマートフォンは短期間の間に通信や情報取得の手段として普及したので、同様の変化が運送業界でも急激に進むのではないか?という心配を持つ人も多いでしょう。

しかし、自動運転やドローンが運送業界のスタンダードになるには、スマートフォンの普及に比べると、もっと長い時間がかかると考える方が妥当でしょう。

自動車エンジニア協会は自動運転を、自動化されていないレベルゼロから、完全に自動化されたレベル5に段階分けしています。現状はレベル2、3付近の、人と自動化技術が同時に介在する技術の実現が目指されている段階です。

当記事の「自動運転トラックの実現」の項目で紹介した国土交通省が行っている自動運転トラックの研究も、有人運転のトラックを無人運転者が追走するレベルであって、ドライバーの運転技術が不要になる段階には、まだまだ至っていないのが現実です。

レベル5に到達するための研究や実験は今後も続いていくでしょうが、現実的にはすぐにドライバーが不要になるようなことは起こりにくいと考えて良いでしょう。

そもそもAI導入にかなりの資金が必要になる可能性があるため

AIをはじめとする最新技術の導入には、数十万円~数百万円とある程度のコストがかかります。

全日本トラック協会が2020年に出した「日本のトラック輸送産業 現状と課題」という資料では、「トラック運送事業者の9割以上が中小企業」であると報告されています。中小でもしっかり利益を出している会社もありますが、それほど大きな利益が出ていない会社や赤字経営の会社も多数あるでしょうから、数百万円の投資ができる会社は少数と考えるのが現実的です。

いずれ使用量が増えて、技術的進歩もすればシステム導入費用が下がっていくことは考えられますが、そのような未来が数年のうちにやってくるとは考えにくいと言ってよいでしょう。

運送業が懸念すべき事項

ここでは、運送会社の経営者が懸念すべき業界の問題を記載します。経営者としては頭が痛い問題もあるかと思いますが、問題を直視して対策を考えることは経営の安定には欠かせませんので、ぜひご一読ください。

ドライバー不足問題

国土交通省の報告によると、運送業界のドライバー不足は2012年以降、10年ほど続いています。人手不足は有効求人倍率に顕著に表れており、2021年5月の有効求人倍率は、全職業の平均が0.94倍であるのに対して、トラックドライバーは1.88倍とほぼ2倍の数値が記録されています。つまり、人手の不足が多くの産業の平均より深刻であるわけです。

また、トラックドライバーはほかの産業よりも平均年齢が高いこともわかっています。厚生労働省が2020年に出した「賃金構造基本統計調査」では、全産業に従事する人の平均年齢は43.2歳なのに対して、中小型トラックドライバーは46.4歳、大型トラックドライバーは49.4歳と、明らかに上です。

これを踏まえると、経営者としては20~30歳代のトラックドライバーの確保や育成、定年退職後の再雇用などを考える必要があります。

また、近年は女性ドライバーも増えていますから、例えば子育て中の女性に配慮した就業体制を整えることで人手不足を補っている会社もあります。

参考:https://www.mlit.go.jp/common/001242557.pdf

原材料費などの高騰

運送業の経営を圧迫する問題のひとつに、原材料費の高騰があげられます。2020年からの新型コロナウイルス感染拡大に関連する物流効率の低下で、梱包資材が値上がりしている背景もありますが、運送業界に大きなダメージとなるのは燃料費の高騰です。

トラックを使用する運送では仕事をすればするほど燃料を使いますから、原油の価格高騰は収益に大きな影響を与えます。社会的な影響が大きい分野なので燃料費の高騰自体は個々の会社でどうにかできる問題ではありません。

そのため高速道路の利用や配送ルートの見直し、アイドリングや空ふかしの防止などを意識するエコドライブの徹底も重要です。

その他の要因

会社を健全に運営していくには、従業員のモチベーションを維持し続けることも重要です。そのため報酬を上げることや、成果に対して何らかのインセンティブを関連付けること、福利厚生の強化なども大切です。

以下に参考になる記事があるので、ぜひご参照ください。
「運送業における働き方改革とは?経営者が取り組むべきアクションも説明」
「運送会社が倒産する前兆とは?理由も併せて懸念別に解説」

また、経営状態が悪いと、従業員の報酬をアップするなど会社としてプラスになる策を打ち出すことも困難です。そんな時は、経営コンサルタントに相談するなどして、まず経営改善に取り組むこともおすすめします。

ブルック・コンサルティングがサポートできること

中央区銀座に位置するブルック・コンサルティングは、経営改善のための資金サポートを得意とする会社です。今回紹介した運送業界が直面している問題点を克服するためには、設備投資や人的投資など、費用を必要とするものもあります。そのため、まずは経営状態の改善を行い、プロフェッショナルのアドバイスによる資金調達を受けて、財政面の不安を減らすことが重要でしょう。

また、ITシステム導入や人材雇用などに関する助成金・補助金を利用したくても、申請の仕方が良く分からないといった場合にも、ブルック・コンサルティングは申請作業をサポートすることが出来ます。

まとめ

自動運転やドローン配送、AIなどの発展によって「運送業がなくなるのでは?」という危機感を持っている人に向けて、運送業がすぐになくなることはない、という結論とその理由を解説しました。上記のような技術は確かに発展していますが、すべてが無人化するようになるには技術面や法整備の問題がまだまだ多く存在するからです。

その一方で、運送業界ではドライバーの不足が深刻化しており、人手不足で利益が上げられないことから倒産する運送会社が増えていくリスクはあります。

この点を踏まえると、むしろ経営者にとっては上記のような技術の発展は歓迎すべきものと言っても良いでしょう。また、多くの人が感じているようにネット通販などの発展によって運送業の需要は増えていますから、新たな技術を取り入れることができれば、むしろ「勝ち組」として大きな利益を上げられる可能性もあります。

ただし、「新しい技術を率先して導入するのは、資金的に難しい」という経営者も少なくないでしょう。そんな時は、まず経営改善や補助金・助成金の申請を前向きにご検討ください。ブルック・コンサルティングは、資金調達に特化して運送業の経営を改善してきた実績を多数持っています。また、返済不要な補助金や助成金のサポートも得意としています。

運送業の経営改善、資金調達をお考えであれば、多数の実績を持つブルック・コンサルティングにお気軽にご相談ください。

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