企業の資金繰りにおいて、金融機関から経営改善計画書の提出を求められる場合があります。返済条件の緩和や新たな借入を望む際にはできる限り失敗を避けたいものですが、経営者が書類の作成に多くの時間を取られてしまっては本末転倒です。そこで今回は、経営改善計画書の書き方について詳しく解説します。
経営改善計画書とは
経営改善計画書とは、自社の経営状態を改善する方法について、具体的な数値で計画した書類のことを指します。
金融機関への返済条件の緩和を依頼する際には、中小企業金融円滑化法によって実現可能性の高い抜本的な経営改善計画書の提出が義務付けられています。
経営改善計画書の種類
経営改善計画書には、大きく分類すると以下の2つに分けられます。
短期的な経営改善計画書
1つめは短期的な経営改善計画書です。資金繰りの悪化などにより、金融機関から新規の借入が難しくなった場合に作成される書類です。
中長期的な経営改善計画書
2つめは長期の経営改善計画書です。5年や10年先を見据えて、「更なる利益の増加や事業拡大、生産性向上」を図る前向きな目的で作成される書類です。
経営改善計画書の作成が必要なタイミング
経営改善計画書の作成が必要になるタイミングについては、以下の3点が考えられます。
・資金繰りが悪化し、金融機関から書類を要求された場合
・金融機関が今後の経営計画を把握する場合
・新たに金融機関から支援や借入を受ける場合
短期的な経営改善計画書としての主なケースは、資金繰りが行き詰まり、金融機関への返済条件の緩和、いわゆる「リスケ」をお願いする際にどのような手段で改善するのかを示すために提出を求められるものです。
一方で、「事業計画書」として5年後・10年後を見据えた長期的な経営計画を示すために作成する場合もあります。
経営改善計画書の枠組み
経営改善計画書の大まかな枠組みは以下の通りです。
①序文・自社の状況説明
②現状分析
③課題・問題提示
④解決策の提示
⑤具体的な行動計画
⑥利益計画
⑦資金計画・資金繰り表
これら①〜⑦について、詳しく解説します。
序文・自社の状況説明
はじめに、自社の現状をしっかりと説明します。基礎となる経営理念や経営方針から始まり、取り組んでいる事業の概況や計画に対する進捗状況を、数字でわかりやすく示すことが求められます。
現状分析
次に、リスケを依頼する事になった現状を分析し、正確に示しましょう。
経営の悪化には必ず原因があります。その要因を自身で把握して分析することができていなければ、そこから改善するための手立てを企てるのは難しいと判断されるでしょう。
計画と現状とのギャップを生んだ原因を正確に分析することが不可欠です。
課題・問題提示
しっかりと現状分析をすることができれば、次に改善のための課題も見えてくるでしょう。
現状の分析から課題点の把握まで論理的に考えることで、解決策の具体性につながります。
課題の内容だけでなく、課題点を正しく把握することができているかどうか厳しい目でチェックされている意識を持つことも大切です。
解決策の提示
課題までが明確になったら、どのような方法で解決するかを明確に提示します。
売上が落ち込んだ原因をはっきりと示すことができる場合は解決策も明示できますが、原因を特定しきれていないケースもよく見受けられます。そのような場合は、役員報酬のカットや地代家賃の削減など固定費の削減を積極的に提示すべきでしょう。
具体的な行動計画
解決策を元に、具体的にどのような行動により改善を目指していくのかを示す項目です。解決策に加えて努力目標や行動計画表を付け加え、経営改善までの道程を第三者が見てもわかりやすいようにまとめます。
利益計画
金融機関にとって、リスケに応じることで本当に資金繰りが改善され、経営状況が安定するのかどうかは重要視される判断基準です。今後1年間の資金繰りを表にまとめ、実現が可能な計画であることを示します。
資金計画・資金繰り表
最後には中期的な計画の元、今後5年ほどの期間でも金融機関にとって安心できる資金繰りの見通しを示し、信頼の獲得へと繋げるべきでしょう。
中小企業庁の経営改善計画書サンプル
中小企業庁が経営改善計画書のサンプルを公開しています。
※参考:https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/kakushin/kaizen/2018/180718kaizen13.pdf
現状の整理やビジネスモデルの説明がわかりやすく、また改善のための施策や具体的な計画も明確にまとめられています。もちろん企業ごとの状況によって記載すべき内容は変わりますが、金融機関の担当者にとってわかりやすいサンプルとしてぜひ一度ご覧になってはいかがでしょうか。
円滑に信頼を勝ち取るための経営改善計画書の書き方のポイント
ここからは、金融機関からスムーズに信頼を得るため、経営改善計画書の書き方における要点を3つお伝えします。
10年以内に債務超過を解消できる目処が立っているかどうか
債務超過の状態にある場合、その解消の目処が10年以内に見込めるかどうかがひとつの判断基準となります。債務が超過している企業は資金調達が困難になります。可能な限り早く解消できるように取り組むことが重要です。
実抜計画の考え方で利益計画を立てているか
実抜計画とは「実現可能性の高い抜本的な経営再建計画」の略称であり、金融業界で使われる言葉です。実現可能性の高さを示す条件としては以下の3つが掲げられています。
・計画の実現に必要な関係者との同意が得られていること
・計画における債権放棄などの支援の額が確定しており、当該計画を超える追加的支援が必要と見込まれる状況でないこと
・計画における売上高、費用及び利益の予測等の想定が十分に厳しいものとなっていること
事業者の判断による抽象的な考え方ではなく、金融業界の常識に則った利益計画が求められます。
内部要因を主に紹介し、役員報酬の減額などを盛り込んで反省と解析の姿勢を示す
改善計画では外部要因よりも内部要因について細かな点まで触れる事で、事業者自身がコントロールできる部分での改善の姿勢を示すことも大切です。
根拠に乏しい売上の増加見込みや外部への責任転嫁は、金融機関からの評価にはつながりません。役員報酬の減額やリストラといった犠牲を払う覚悟や、これまでの実績に基づく現実的な解析による計画を示すことで、少しでも印象が良くなることが期待されます。
まとめ
企業の資金繰りにおいて経営改善計画書を作成する場面は、重要な局面である場合が多いでしょう。抜け目のない内容を目指したいところですが、資金繰りが厳しい状況で経営者が書類作成ばかりに多くの時間を取られてしまうのは現実的ではありません。
今回紹介した内容を踏まえて簡潔でわかりやすい書類作成を目指すだけでなく、専門家による支援も検討して経営状況の改善につなげましょう。ブルック・コンサルティングでは、経営改善計画書の書き方についてサポート等を行っております。お気軽にご相談くださいませ。