運送業の資金繰りを改善するポイント│資金調達方法や注意点を解説

コンサルティング

近年は人手不足などの問題も取り沙汰される運送業。生活には欠かせない産業でありながら、数多くの課題を抱えているのが実情です。

資金繰りの悪化を引き起こす、運送業ならではの理由とはどのようなものが考えられるのでしょうか。経営改善に向けた資金調達の方法も含めて、具体的な事例や抑えておくべきポイントを解説します。

運送業の現状と資金繰りが悪化する主な理由

2017年度時点のデータによると、運輸業界全体の産業規模は約38兆円となっています。このうち旅客運送業を除く物流業は約24兆円と、運輸業の中でも多くの割合を占めています。

物流業界の労働就業者は2018年度で約258万人に達しており、これは全産業就業者数の約4%にあたるほどの多さです。このことからも、運送業は日本の産業全体から見ても非常に大きな産業であると言えるでしょう。

特に近年の流れとして、電子商取引(EC)市場、いわゆるインターネット通販の市場規模が急速に拡大した事による影響が大きくなっています。2018年にはEC市場のうち物販に関わる分野だけでも約9.3兆円規模に達しました。これにともなって、宅配便の取り扱い件数は5年間で18%も増加しています。その数は約6.7億個に及び、運送業の業界そのものに大きな影響を与えるほどの規模になっています。
※参考:https://www.mlit.go.jp/common/001354692.pdf

しかしその一方で、運送業は多くの課題を抱えているという側面も見受けられます。

例えば、宅配便取り扱い件数が増加するにつれて、次第にEC市場では「当日配送」や「送料無料」といったサービス面での競争が広まりました。そのしわ寄せは物流業者へと押し付けられ、負担が増してしまう事態になってしまいました。取り扱う件数そのものは増加しているものの、なかなか利益にはつながらないというのが実情なのです。

労働力不足も深刻化しています。人手が不足していると感じている事業者は2018年から2019年にかけて70%前後という水準で推移しており、ここ数年は強まる傾向にあると言われます。事業者にとってはトラックがあっても人がいないため仕事を受けられないという状況になりかねないのです。このような場合は、資金繰りが悪化の一途をたどる悪循環に陥ってしまいます。
※参考:https://www.mlit.go.jp/common/001354692.pdf

そしてドライバーの高齢化も歯止めがかからない状態がつづいており、見逃すことのできない大きな課題です。この要因としては過酷な労働条件が挙げられます。トラックドライバーの年間労働時間は全産業の平均と比較して2割ほど長いにも関わらず、年間所得額は大型トラックのドライバーで約1割、中小型トラックドライバーで約2割全産業平均を下回っているというデータも存在します。
※参考:https://www.mlit.go.jp/common/001354692.pdf

このように課題も多い運送業ですが、具体的に資金繰り悪化を引き起こす主な理由はどのようなものがあるのでしょうか。詳しく解説します。

【理由1】支払いサイト(取引代金締め日から支払いまでの期間)が長い傾向にある

取引代金の締め日から支払日までの期間を指す「支払いサイト」について、一般的な企業は「月末締め翌月末払い」として、1ヶ月ほどの支払いサイトである場合が多いとされています。
しかし運送業においては慣習的に支払いサイトが長く、「月末締め翌々月末払い」といった支払いサイトがよく見受けられます。これは大企業が元請けである場合が多いことが理由とされています。

また、手形による取引の習慣も根強く、場合によっては支払いが3ヶ月から4ヶ月先となってしまうような事例も多く存在します。支払いサイトが長くなると、その分人件費や燃料代など入金までに立て替えなければならない費用は必然的に多くなっていき、結果として資金繰りが悪化する直接的な要因となってしまいます。

【理由2】燃料費や人件費などの関係で経費管理が難しく利益率が低い

運送業は他の産業と比較しても経費の管理が難しく、そのために利益率が低いとされています。経費管理が困難である運送業ならではの理由として、人材不足や燃料費の高騰などが挙げられます。

労働力不足が顕在化している運送業では、ドライバーの高齢化がさらなる人手不足へと拍車を掛けています。様々な産業における従業員の構成年齢を比較したデータによると、特に大型トラックのドライバーは全産業の平均と比べて高齢化の傾向が顕著です。2019年時点で15〜29歳の割合は全産業平均が19.1%ですが、大型トラックのドライバーは3.5%という少なさになっています。
※参考:https://www.mlit.go.jp/common/001354692.pdf

業務の経験年数が多い分人件費が高くなるだけでなく、高齢の世代が一斉に退職時期を迎えると、今にも増して労働力不足が深刻化するのです。

運送業には欠かせない燃料費も、常に変動するため経費管理が困難になる一因と言えるでしょう。相場が高騰した場合でもそのまま運賃に反映させることは難しく、結果的に運送事業者の負担が増えやすい構造になってしまっているのです。

【理由3】トラブルによる急な出費が必要になることが多い

長時間に渡って車両を運転するという業務の性質上、車両の故障や交通事故などのトラブルも避けることができないリスクとなります。万が一事故が発生してしまった場合は、車両の修理だけではなく相手への補償や積荷の賠償など多額の費用が必要になる場合も考えられます。

また、車両の故障や修理は費用が嵩むだけでなく、その間稼働ができないため売上の減少も招いてしまいます。

このような突発的な出費に備えて余剰資金を確保しておくことが理想的ですが、資金繰りの余裕が無い場合には1つのトラブルが会社の存続に関わる可能性も考えられるでしょう。

【理由4】売上が不安定

運送業の売上は一定でなく、時期によって大きな変動が見られます。物流は例年規則的に傾向が読める季節的な需要だけでなく、景気によっても左右されます。事業者の企業努力に関わらず業界全体の売上が落ち込むこともあり、安定しにくい要因となっています。

運送業の資金繰りを改善するポイント

ここまで紹介した運送業の資金繰りが悪化する主な原因を踏まえて、次はその資金繰りを改善するためのポイントをいくつかご紹介します。

業務の効率化をはかり、固定費を削減する

固定費の削減は、初めに取り掛かるべきポイントです。運送業は業務効率が悪い傾向にあり、裏を返すと改善の余地が多いと言えるでしょう。徹底的な業務の効率化や労務管理の改善による残業時間の削減により支出を抑える努力が必要です。

例えば、運行データや位置情報などを記録する「デジタルタコグラフ」は経費の削減に有効です。配送経路を最適化することで効率化や燃料費の削減につなげられるなど、業務内容を改善して資金繰りの悪化を防ぐ手立てとなり得ます。

小口取引を増やし、キャッシュフローを安定させる

資金繰りの改善を優先的に考えるとつい大口の取引を求めてしまいがちですが、まずは小口の取引による現金での収入を着実に増やすことでキャッシュフローを安定させるべきでしょう。

大口の案件は入金までに時間を要する場合も多く、継続が見込めない場合はまたすぐに元の不安定な状態へと戻ってしまい、キャッシュフローの安定とは程遠くなってしまいます。

複数の小口取引を継続につなげられるよう地道な努力を続けることで信頼も増え、少しずつ安定を目指すことができるでしょう。

取引先と交渉し、支払いの延長を依頼する

どうしても資金繰りが上手く行かずに行き詰まってしまう場合は、取引先との交渉の元、今月の支払いを来月にしてもらうなど支払いの延長をお願いすることも一つの手段です。

ただし自社の資金繰りが苦しいという状況を取引先に示すことになるので、これまで培った信頼関係を損なうことにもつながりかねません。最終的な手段として、しっかりと検討した上での判断が望まれます。

日本政策金融公庫などの融資を利用する

資金繰りが厳しい場合は、積極的な融資の活用も忘れてはいけません。金融機関による融資のほか、民間金融機関の取組みを補完し、事業に取組む方々等を支援する政策金融機関である日本政策金融公庫もチェックしておくべきでしょう。事業者の状況に合わせて低金利の融資制度が複数用意されているので、まずはぜひ一度相談してみてはいかがでしょうか。

ファクタリングを利用する

先述の通り支払いサイトが長い運送業においては、ファクタリングという方法が効果的だとされています。

ファクタリングとは、回収前の売掛金を売却して資金を調達するという方法です。金融機関からの融資などと比較して迅速な資金調達が可能であることから、支払いサイトの長さで悩む運送業との相性が良い方法とされています。

ただし金融機関の金利と比較して手数料は高くなるので、一時的な利用に限り他の改善方法と上手く使い分けるのが理想的でしょう。

補助金を積極的に利用する

国や自治体などの公的機関によるものをはじめとした補助金の活用も、資金繰り改善のためには欠かせません。補助金の種類は幅広く、申請書類の作成には専門的な知識も要求されるため、申請サポートを得意とする会社を頼ることも検討しましょう。

また、補助金の入金は事業が完了して報告を終えた後になるものも多いため、補助金が採択されたから一安心ではなく、資金繰りに関して事前の計画性も重要となります。

M&Aを視野に入れる

M&Aは企業買収の強硬手段という印象をお持ちの方も多いかもしれません。しかし自社単独での資金繰りが困難である場合、相手企業の傘下となって事業を継続することも選択肢のひとつです。従業員の雇用の継続など事業を続けていくことを優先した時に、視野に入れておくべき方法ではないでしょうか。

ブルック・コンサルティングが運送業の資金繰りで手助けできるポイント

財務・経理を中心としたコンサルティングを行うブルック・コンサルティング社では、運送業の資金繰りにおいても以下のようなサポートを実施することが可能です。

最適な金融機関・ファクタリング会社の紹介

融資やファクタリングが必要な場合、その事業者に適した金融機関やファクタリング会社を紹介します。融資や資金提供を受けるための計画書の作成を同社に依頼することで、経営者は時間を取られず経営に集中できる点もメリットと言えるでしょう。

運送業向けの補助金の紹介・申請書作成代行

国や地方自治体、独立行政法人等の準公的機関による運送業向け補助金の紹介や申請書の作成代行を行っています。採択後のフォローアップまで行っており安心です。

M&A後の円滑な事業支援

M&Aは資金繰りの解決策ではあるものの、異なる会社が統合することにより丁寧なすり合わせが必要となります。ブルック・コンサルティングでは組織体制・組織構造の統合、制度の統合、業務の統合、文化の統合といった各項目で支援を行い、M&A後の円滑な事業実施に向けサポートします。

まとめ

業界ならではの特徴的な事情を多く抱えている運送業。世の中全体の流れや景気による影響など、経営者の努力だけでは改善できない部分も多いことでしょう。資金繰りの改善を目指していても、取引先との交渉や固定費の削減に取り組みながら、経営者1人でファクタリングやM&Aのような話を進めていくことは困難です。

ブルック・コンサルティングでは経営診断から企業統合まで幅広いサービスを提供しています。税務や経理に強いコンサルティング会社と共に資金繰りの改善を取り組むことで、より良い成果につながることが期待できるのではないでしょうか。